無職でニートな20代が怠惰な生活とネガティブな愚痴を綴っているブログです。

カテゴリ:その他 > 歯医者

目覚めると、台風は過ぎ去っていました。
昼過ぎのことです。
いつものように待合室で名前を呼ばれ、診察室の中へと入りました。
それから手前の診察台へ促され腰を下ろします。
目の前には頭上から吊るされた小さなモニターがひとつあり、歯周病の末期なのでしょうか、ひどくグロテクスな写真がいくつも映し出されていました。
どれも歯肉は赤く腫上がり、擦り減った歯根が剥き出しになっています。
歪に並び、噛み合ったそれを眺めていると、なんだか食い気が失せるばかりで心地の悪いものでした。
モニターの向こうに腰ほどの高さの戸棚が備え付けてあり、上は一面窓になっています。
ブラインドは下ろされ、その隙間からガラスに張り付いた雨粒が見えました。
そして通りを過ぎる人や車が見えます。
この景色を何となしに眺めていました。
そうすると、椅子の座りも良く、なんだかウトウトとしてきます。
この頃はいつ起きても眠気が覚めず、なにか恐ろしささえ感じます。
寝起きするだけでなにもしていないと、なにかが衰えていくのじゃないかと、そう思うのです。
先生がやってくると、きょうからどのような治療をしていくのかいろいろと説明されていましたが、ぼくはこのとき上の空で、来週から始まる職業訓練のことばかり考えていました。



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昼過ぎに起き、歯医者へ向かう。
待合室はひどく込み合っていた。
見ただけで加齢臭が匂ってきそうな男たちが順番を待っている。
珍しく女性客がひとりもいない。
診察カードを無言で渡すと、窓際のソファーに腰かける。
席はほとんどが埋まっていた。
奥の壁に大きな薄型テレビが掛かっている。
見ると、男が新幹線内で焼身自殺を図ったらしい。
同じ映像が何度も繰り返し流れる。
事実のみをつらつらと述べると、画面はスタジオに切り替わる。
コメンテーターが眉根に皺を寄せている。
思慮深そうに事件を推論すると、CMに入った。
それが開けると、「いま冷たい食べ物がブームです」と明るい話題へと変わり、ポップな演出で派手に盛り立てる。一転しスタジオは皆笑顔になっている。
他人が奇怪な死を遂げようと、心は痛まない。
テレビに見入っている間にも、何人かが名前を呼ばれ診察室へと入っていった。
ふいに受付の女性が席を立つと、ドアを開け放ち外へ出ていった。
窓から目をやると、一台のタクシーが止まっている。
中から年老いた女性がひとり出てきた。
いまにも崩れ落ちそうなほど弱々しい。
小脇に小さなキャリーカートを引いている。
膝頭はプルプルと震え、歩くのがやっとという感じだ。
彼女は待合い室へ入ると、ぼくの隣に腰かけた。
上品な香りが仄かに漂ってくる。
付き添いの女性は五頭身の肉塊だった。
クビとくびれがない。
後ろ髪は耳の上まで刈り上げていた。
妖怪じみた風貌のそれはやってきて早々にトイレへと消え、以後姿を見なかった。
老婆が抱える二輪のキャリーカートには、消火器ほどの大きさのボンベのようなものが乗っている。
それはナイロン製の入れ物に包まれていた。
入れ物の蓋口が僅かに開いており、隙間から小さく丸い形状の圧力計が覗いて見える。
そこから出た透明のチューブが老婆の首筋へと伸びており、二股に分かれたそれは両耳にだらんとぶら下がり、先は鼻腔に突き刺さっていた。
呼吸器だろうか。
なんとか生きながらえている、というよりは、いまにも死にそう、といった印象だった。
しかし、齢の頃を考えると、自力で歩いているのだから健康なのかもしれない。
一見すると百近い高齢だと思えたが、実際はわからない。
ぼくの主観はだいたいのところ当てが外れる。
診察室のドアが開き、ぼくの名前が呼ばれた。
先生は若い女性の医師で、初めて見る顔だった。
といっても、顔面の八割方がマスクやゴーグルで隠れており、判然としない。
この日は先日の抜歯で生じた穴ボコに薬を塗ると終わってしまった。
痛みはなかった。
治療中、頭部に胸をグイグイ押し当てられ、俄かに下腹部が熱くなった。
この医師は痴女だと思った。
診察室を出ると老婆はまだ座っていた。
そこにはあのボンベがあり、付き添いの肉塊はいない。
あのチューブを引き千切ったら死ぬんだろうか。
死なないにしても苦しむに違いない。
乱歩的な妄想が脳内を過る。
外へ出ると、ドシャ降りの雨だった。




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歯、抜きました。
歯茎に麻酔を四本打って、ペンチのようなもので20秒ほどグイグイやったら、痛みを感じることもなくすぐに抜けてしまいました。
あまりの呆気のなさに、先生に対して「もう抜けたんですか?」と口半開きの状態で二度ほど訊ねてしまいました。
どうやら、上の歯は抜きやすいらしいです(知りませんでした)。

記念に画像を貼っておきます。
放置した末に、なんとなくグロい物質と化してしまったようです…。
キタナイですね。
虫歯で神経が剥き出しになった部分に、なにかかぶせてあります(先日はこれで痛みが治まったのだと理解しました)。
黒いのはおそらく虫歯なんだと思います。
先生はぼくの虫歯の進行度合いについて「ほったらかしすぎだ」と一分間ほど、なぜか嬉々として力説されていました。
ニオイを嗅いでみると、動物園の臭いがしたので、写真を撮った後に捨てました。
久々にドン引きという体験をしたように思います。
口の中にはまだ麻酔の苦味が残っています。
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