sora20150904

約束は午前十時でした。
朝、早目に家を出ると、地下鉄に乗り面接場所まで向かいました。
駅を出てからしばらく歩き、場所の確認を済ませると一度駅前の通りまで引き返し、喫茶店に入り時間を潰しました。
頭はぼうっとして前日までの緊張もあまり感じなかったように思います。
ただ眠たく、落ちてもいい、と思うと不思議と平常心で居られました。
時間が近づくと、390円支払い店を出ました。
応募したのは郊外にある小さな会社で、ビルの五階にありました。
駅からそこへ来る途中には、チェーン店の飲食業がいくつかあり、大きな団地群が立ち並んでおり、遠くのほうには田圃が広がっているのが見えました。
どこかしら長閑な感覚がありました。

約束の時間より10分ほど前に建物へ入りました。
ビルには一階に不動産業が一社入っているのみで、他のフロアは空っぽでガランとした印象でした。
五階まで階段で上がると狭い廊下が伸びており、面した窓はすべて開け放ってありました。
鞄から応募書類を出すと、少し気持ちを落ち着け、会社の名前を探しました。
右手にドアが四つ並んでおり、応募した会社は一番奥にありました。
ドアの横に小さなネームプレートがあるだけで、インターホンもありませんでした。
ドアの前で立ち止まり、姿勢を正すとノックしました。
中からくぐもったような声があり、ぼくは大きな声で用件を伝えました。
それからドアノブを回しながら強く押すと、鍵がかかっておりガタンと音を立ててしまいました。
面接の勝手がわかりません。
すぐに中からドアが開けられ、白髪の男性が見えました。
お待ちしておりました、どうそどうそ、と気さくな様子で言われ、ぼくは、失礼します、と頭を下げて中へ入りました。
入ってすぐ左手に小さなテーブルと椅子が四脚あり、そこへ促され席へと着きました。
周りには二メートル足らずの白い仕切り板のようなものがいくつか立っており、奥のほうは見えなくなっていました。
奥からなにかやりとりをする話し声がしばらく聞こえ、ぼくは両手を膝に乗せ待ちました。
それから担当のふたりがやってくると、ようやく面接が始まりました。
ひとりはさっきの白髪で、もうひとりも白髪のメガネでした。
齢はどちらも50前後に見えました。