時間潰しに公園へ寄るとベンチに腰を下ろした。
朽ち果てた木製のベンチで、真ん中は半円の鉄で仕切られている。
周りには数本の木が植わっており、緑色の枝葉が風にざわざわと揺れている。
三方の端に二メートル足らずのベンチが五脚ずつ置いてあり、何人かのスーツ姿の男たちが腰を据えている。昼間だというのに缶ビールをぐいぐいやっている中年男が見える。
頭を丁寧に真ん中で分けていた。
黒々とした顔が日差しを照り返す。
蝉の声が聞こえそうな暑さに身を捩る。
公園の中央には噴水がある、水は出ていない。
水面をゴミや枯葉がぷかぷかと漂う。
隅に追いやられたかのような遊具がひとつだけある。
ジャングルジムと滑り台を合わせたようなこじんまりとしたものだ。
そこへ中東系の民族衣装を纏った老婆がふたりの小さな子どもを遊ばせている。
見た感じ、孫だろうか。
日本人ではない。
キャッキャと声を上げつつ子どもたちは遊ぶ。
老婆はそれを安穏と見守っている。
見回すと、公園のあちこちに鳩がいる。
三十羽ほどいるように見えた。
餌を欲しているのか、人との距離がとんでもなく近い。
ノドを鳴らす音が聞こえた。
じっとしていると何匹かが寄ってくる。
足を向けてやると、途端に遠のいていく。
灰色に混じって白い鳩が一羽だけいる。
そいつを何となくボンヤリ眺めていると、ピョコンと数センチ飛び上がると歩いている灰色の鳩の背に飛び乗った。
灰色のほうは驚いたように羽をバタつかせる。
そうして振り払われた白い鳩はどこかへ飛び去ってしまった。
それをしばらく目で追っていると、時計台が見えた。
時間を見ると、あと四時間は無為に過ごせる。
ぼくは爪を切りはじめた。
パチパチと爪を切り、その都度地面に撒いていく。
足元を見てみると、ベンチの下に蟻の行列が出来ている。
なにか白いものをせっせと運んでいた。
しばらく黙々と爪を切る。
周りから見たら、おかしな人だろうか。
これも精神病の徴候かもしれない。
もう三十分近く座っている。
見回すと、いつのまにか若いカップルばかりになっている。
スーツ姿の男たちは消えていた。
いまきたカップルは隣のベンチに腰を下ろすと、女のほうが「あ、ハト鳴いてるよお、すごおい」という。男は「癒されるよねェ? カワイクない?」と返し「えーキモいよお」「なんでえ? カワイイじゃん! キモカワじゃん! 癒しじゃん」「うそお」と延々とやりだす。
にわかに肌が粟立つ。
視線を逸らすと、さっきの子どもが腕を振り回して鳩を追いかけていた。
白いキャップに白いシャツを着て藍色のジーパンを履いている。
無邪気に鳩を蹴散らしていく。
もうひとりの子どもは、疲れたのか、乳母車に乗っていた。
眺めていると老婆と僅かに目が合った。
なんとなく気まずい思いで、表情を変えずに視線を逸らす。
煙草に火をつけた。 
そうしてしばらくぼうっと呆けた。
足元で煙草を揉み消すと、列からはみ出した数ひきの蟻がさっきの爪を運んでいた。
見つめてみたものの、とくになにも思わない。 
ふと振り返ると、後方の死角でさっきのカップルの女のほうがシャボン玉をぷかぷかやっていた。
どうやら写真が撮りたいらしい。
きのう蚊に刺された足の裏が痒い。